早産児合併症予測ツールとは
周産期医療の発展により、妊娠中の母体管理や早産児に対する治療や管理が向上しているとは言え、妊娠32週未満の早産児が年間約1万名(全妊婦の約1%)も産まれております。さらに、その背景には切迫早産や妊娠高血圧症候群など、日々早産の危険にさらされている妊婦が約2~5倍いることが予想されます。しかしながら、早産で生まれた児が短期的・長期的にどのような合併症に、どれくらいの確率で罹患するのか、一般産科診療では正確に妊婦さんやご家族に説明できていない現状にあります。
そのため、私たちは新生児臨床研究ネットワーク(NRNJ)のデータベースを用いて、出産前の母体情報のみから出生後の早産児の合併症を予測するツールを作成しました。妊婦さんやご家族に対して出生前に説明する際の補助として産婦人科医や新生児科医がこのツールを使用していただけたらと思います。なお、本ツールは医療従事者による使用を想定しており、使用前に「使用上の注意」をご参照ください。
公開日 2023年2月8日
母体・胎児情報
半角で入力)※2
1 予想分娩週数は22週0日~31週6日まで
2 分娩時推定体重は200~1500(g)で記載
短期予後(NICU退院まで)
短期予後 | 確率(%) |
---|---|
NICU死亡 | |
呼吸窮迫症候群 | |
慢性肺疾患 | |
在宅酸素 | |
脳出血(grade III/IV) | |
脳室周囲白質軟化症 | |
敗血症 | |
壊死性腸炎 | |
未熟児網膜症 | |
短期複合合併症 ※ |
短期複合合併症:NICU死亡、脳出血(grade III/IV)、
脳室周囲白質軟化症
長期予後(3歳時)
長期予後(3歳時) | 確率(%) |
---|---|
3歳インタクトサバイバル ※1 | |
NICU退院後~ 3歳までの死亡 ※2 |
|
脳性麻痺 ※2 | |
発達指数 < 70 ※2 | |
在宅酸素 ※2 | |
眼鏡使用 ※2 | |
補聴器使用 ※2 | |
長期複合合併症 ※2 ※3 |
- 3歳までに以下がない状態(NICU死亡、長期複合合併症[NICU退院後~3歳までの死亡、脳性麻痺、発達指数<70])
- NICUを退院できた場合の各種合併症の確率を表示している
- 長期複合合併症:NICU退院後~3歳までの死亡、脳性麻痺、発達指数<70
エクセル日本語版 version 2023/1/18
使用データ:
新生児臨床研究ネットワーク 2006-2015年
予測モデル作成:
多重ロジスティック回帰モデル
原著論文
Ushida et al. Acta Obstet Gynecol Scand. 2021 Mar3
「Antenatal prediction models for short- and medium-term outcomes in preterm infants」
使用上の注意
本プログラムはあくまで日本における平均的な新生児合併症率を計算したものであり、個々の症例での新生児予後を予測したものではありません。そのため治療方針の決定に本プログラムを使用しないこと。過去のデータベースに基づいて作成したモデルのため、今後の周産期医療の進歩により合併症のリスクは現時点より改善する可能性があります。また本プログラムは周産期医療に従事している者による使用を想定しております。本プログラムによる結果をどのように解釈し、どのように医療現場で利用するかは、その医療従事者の判断・責任であり、本プログラムの使用により生じたいかなるトラブル・損害等について、一切の責任を負いかねます。上記の内容をすべて同意した上で、本プログラムを使用するものとします。
一般公開の許可
愛知県保健医療局生活衛生部 医薬安全課の許可あり
お問い合わせ
名古屋大学 産婦人科
牛田 貴文(担当)
E-mail: