当院の取り組み
婦人科の主ながんには、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんがあります。また、他にも子宮肉腫や絨毛がんといった希少がんも存在します。名古屋大学では、国内外の最新の情報に基づいて、手術・放射線療法・薬物療法(抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬など)を駆使して、高度な医療を行っています。以下に、主要な疾患に対する概要をご紹介します。
卵巣がん
卵巣がんについて
卵巣には、様々な種類の腫瘍が発生します。頻度の高いものとして、上皮性卵巣がんがあり、若年者では胚細胞性腫瘍も見られます。卵巣腫瘍は、初期症状がみられないことが多いため、急激な腹部膨満感が生じ、発見されることが多いです。また、一部の腫瘍は、子宮内膜症と関連があることが明らかとなっており、検診の際に偶然みつかる場合もあります。
卵巣がんの治療方法
卵巣腫瘍の治療方法は、手術による診断と腫瘍減量、そして化学療法による全身治療の組み合わせとなります。このような治療により、多くの患者さんは奏功することが多いですが、卵巣がんは再発を来しやすいという特徴も知られています。そこで、ステージIII期・IV期の患者さんに対しては、化学療法のあとに再発予防の維持療法を行うことが一般的となっています。
また、幸い初期で診断された若年の患者さんに対しては、ご希望があれば、妊孕性温存手術を積極的に行っています。妊孕性温存手術の場合は、腫瘍がある側の卵巣は摘出しますが、子宮と正常卵巣は温存されます。そして、術後に化学療法を行う場合もありますが、治療後に妊娠・出産された患者さんも多く経験しております。
遺伝性乳がん
卵巣がん症候群(HBOC)と
リスク低減卵巣卵管摘出術(RRSO)
近年、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)という疾患が広く知られるようになりました。HBOCの方は、家系的に乳がん、卵巣がんなどの悪性腫瘍の発症リスクが高いと言われております。そのため、HBOCであると判明している方に対しては、卵巣がんを発症していなくても、予防的卵巣卵管切除術(RRSO)を行うことができます。2025年1月時点では、乳がんを発症している患者さんに対するRRSOは、保険診療で行うことができます(乳がん未発症の患者さんは、自費診療になります)。HBOC、RRSOについて、詳しくは下記リンクページにまとめられていますので参考にしてください。
子宮頸がん
子宮頸がんについて
子宮頸がんは、主にヒトパピローマウイルス(HPV)の感染により、発症することが知られています。そのため、小学校6年生~高校1年生の間に、HPVワクチンを接種することが、予防に極めて重要です。ただ、中にはHPVとは関連のない子宮頸がんもありますので、HPVワクチンの接種の有無に関わらず、子宮頸がん検診を受けることも重要です。
子宮頸がんの治療方法
子宮頸がんに対する治療方法は、手術もしくは放射線化学療法となります。ステージI期・II期の場合は手術療法が行われることが多く、手術により子宮全摘術を行います。また、病変の広がりによっては、子宮の周囲の組織も併せて切除する広汎子宮全摘術を行う必要性があります。広汎子宮全摘術の場合、膀胱へ行く神経の近傍で手術操作を行う必要があり、術後の排尿障害(尿意がなくなる、尿をだそうと思っても出せない)が高頻度に発生します。当院では、根治性を保ちながら可能な限り神経を温存する手術を行い、術後の排尿障害に対しても良好な結果を得ています。
近年、手術療法においては、腹腔鏡などを使用した低侵襲手術が行われつつあります。子宮頸がんに対しても、2018年4月より腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術(子宮頸がん)として保険収載されました。当院は定められた施設基準を満たしており、健康保険で行うことができます。しかし、病変の大きさや広がりによっては、開腹手術や他の治療方法が勧められる場合がありますので、すべての患者さんに対して、腹腔鏡下手術が適切であるわけではありません。
手術適応がない場合、同時放射線化学療法もしくは化学療法を行います。放射線治療にあたっては、放射線科医の診察を受けて頂き、治療計画を立てます。また、化学療法については、産婦人科で入院治療を行います。患者さんによっては、免疫チェックポイント阻害薬の使用も保険診療で行えます。治療に伴う有害事象は、使用する薬剤や患者さんの体質によって異なりますが、吐き気、下痢、しびれ、脱毛などがあります。そして、免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合は、様々な免疫関連有害事象の発症に備えて、糖尿病内分泌内科、循環器内科、皮膚科等と連携し、適切な対応を行っております。なお、これらの治療によっても、卵巣機能は低下しますので、将来の妊娠・出産は不可能となります。
子宮頸がんに対する妊孕性温存手術
上述のように、子宮頸がんの治療に当たっては、基本的に妊孕性を失います。しかし、一部の初期の症例に対しては、妊孕性温存手術(広汎子宮頸部切除術)が行われることがあります。対象となるのは、「1)妊娠を強く望んでいる、2)腫瘍径2cm以下、3)扁平上皮がん、4)画像上子宮頸部以外の病変がないこと」を満たす患者さんになります。この手術を行う場合、子宮の頸部(子宮の下1/3程度)のみを切除し、残った子宮体部と腟を縫合します。また、リンパ節郭清も行います。つまり、子宮体部と両側卵巣が温存されるため、妊孕性は温存されます。妊娠に当たっては、不妊治療を要する場合が多いですが、患者さんによっては自然妊娠も可能となります。また、妊娠後も早産リスクは高くなるため、慎重な妊娠管理が求められます。
名古屋大学で子宮がん検診はできますか?
無症状の方は自費診療となります。また、名古屋市のがん検診推進事業(無料クーポン券)の協力医療機関ではありません。名古屋市内の協力医療機関の詳細については、名古屋市「子宮がん検診」をご参照ください。
子宮体がん
子宮体がんについて
子宮体がんは、近年増加傾向にあり、閉経前後で患者さんが増えてきます。初期症状として、不正出血がみられることが多く、初期でみつかる患者さんが多いため、予後は比較的良好です。
子宮体がんの治療方法
子宮体がんは、手術可能な状態で診断されることが多いため、まずは手術で子宮全摘術を行い、再発リスクに合わせて化学療法を行うことが一般的です。子宮全摘術の方法としては、開腹手術、腹腔鏡手術に加えて、手術支援ロボットを使用した手術も行っています。ロボット支援手術「手術支援ロボット ダヴィンチ(Intuitive Sugical社)」では、執刀医が患者さんから離れた位置にあるサージョンコンソール(操縦席)で、モニターに映し出された3次元の鮮明な拡大画像を見ながら、患者さんに設置した4本のロボットアームを手元のコントローラで遠隔操作し手術を行います。ロボットの動きは非常に精密で手ぶれがなく、コンピュータ制御により人間の手の繊細な動きを再現することができ、従来の腹腔鏡下手術に比べてより確実で精細な手術を行うことができます。
手術後に再発リスクが高いと判断された患者さん、そして手術適応がない患者さんに対しては、化学療法を行います。患者さんによっては、免疫チェックポイント阻害薬の使用も保険診療で行えます。治療に伴う有害事象は、使用する薬剤や患者さんの体質によって異なりますが、吐き気、下痢、しびれ、脱毛などがあります。そして、免疫チェックポイント阻害薬を使用する場合は、様々な免疫関連有害事象の発症に備えて、糖尿病内分泌内科、循環器内科、皮膚科等と連携し、適切な対応を行っております。
子宮体がんに対する妊孕性温存手術
子宮体がんに対する治療においても、基本的に将来の妊娠・出産は不可能となります。ただし、妊娠を強く希望される若年の患者さんに対しては、条件を満たせば子宮温存治療(ホルモン療法)を行うこともできます。対象となるのは、「1)妊娠を強く望んでいる、2)高分化の類内膜がん、3)ステージIA期」を満たす患者さんになります。まず、子宮内膜全面掻把術やCT検査・MRI検査により、上記の条件を満たすことを確認し、黄体ホルモン(MPA)を用いた治療を行います。その後、再度、子宮内膜全面掻把術を行い、奏功を確認できた場合、治療終了となり、妊娠・出産が可能となります。しかしながら、黄体ホルモン治療では、再発率も高いことが知られておりますので、再発を来した場合や子宮温存希望がなくなった場合は、子宮全摘術を行う必要があります。
絨毛性疾患
絨毛性疾患とは?
絨毛性疾患とは妊娠時の胎盤をつくる絨毛細胞(正式には栄養膜細胞またはトロホブラストと呼ばれます)から発生する病気の総称で、大きく分けると異常妊娠の1つである胞状奇胎、胞状奇胎後に発生する腫瘍である侵入胞状奇胎(侵入奇胎)および悪性腫瘍である絨毛癌の3つが含まれます。その他に稀な腫瘍性病変として胎盤部トロホブラスト腫瘍(PSTT)や類上皮性トロホブラスト腫瘍(ETT)なども含まれます。
当院では1962年に全国に先駆けて絨毛性疾患専門の登録管理センターを設置し、愛知県内の全ての病院・診療所における胞状奇胎の登録を行い、各医療施設と連携しながら胞状奇胎後の患者さんのフォローアップや胞状奇胎後に発症する侵入奇胎・絨毛癌の早期発見と治療成績の向上に努めてきました。また絨毛性疾患の全国登録の事務局として全国データの解析もおこなっています。したがって過去40年以上に渡り国内でも最大規模の絨毛性疾患症例の治療を経験してきており、経験豊富な専門医により絨毛性疾患の最先端治療を行い、国内トップレベルの治療成績を築いてきました。県内各医療施設からの紹介患者さんの治療のみでなく、私どもの治療実績を基に全国の病院から寄せられる患者さんの紹介やセカンドオピニオンの依頼を広く受け入れています。
胞状奇胎とは? その発生原因は?
胞状奇胎とは、昔は『ぶどう子』ともよばれた疾患で、妊娠した子宮内にぶどうの房のような外観の“つぶつぶ”が多数存在する病気です。我が国においては約500妊娠に1回、300分娩に1回の割合で発生するといわれています。近年の少子化にともなって絶対数は減少傾向に有りますが、一定の割合で発生する病気です。高齢(特に40歳以上)になるとやや発生率が高くなるといわれています。
胞状奇胎は妊娠成立時の精子と卵子の受精の異常によっておこり、母親の卵子由来の核(DNA)が消失し父親の精子由来の核のみから発生する全胞状奇胎と、父親からの精子2つと母親からの卵子1つが受精した3倍体から発生する部分胞状奇胎とに分類されます。いずれも正常な胎児(2倍体)に発育することはありません。まれではありますが、2卵性の双子の妊娠で一方は胞状奇胎、もう片方が正常胎児というケースの治療も当院では複数例経験しています。
このような受精の異常がなぜ起きるのかは不明で、胞状奇胎の発生原因は明らかでなく、親から子へ遺伝する病気ではありません。一度胞状奇胎を経験した患者さんが、もう一度胞状奇胎になる確率は約2%と言われています。
胞状奇胎の診断は? 症状は?
胞状奇胎の外来での診断は、妊娠反応陽性で内診台での超音波(経腟エコー)検査で子宮内に特徴的な像があれば、妊娠2ヶ月から3ヶ月の時期に診断できます。超音波のみでは流産との鑑別が困難な場合もあります。胞状奇胎妊娠では血液中(または尿中)のhCGという妊娠性ホルモンの値が正常妊娠より一般に高いので、hCGの測定が診断の助けになります。確定診断は手術後の子宮内容物の病理検査によります。
胞状奇胎に特徴的な症状は乏しく正常な妊娠初期の症状と似ていますが、時に性器出血や腹痛、つわり(吐き気)などの症状を認めることがあります。
胞状奇胎の治療は?
治療は流産と同様の子宮内容除去手術(胞状奇胎除去術)を施行し、子宮内容物の病理検査により最終的に確定診断します。約1週間後の診察で、子宮内容物の遺残が疑われる場合には、もう一度子宮内容除去手術(胞状奇胎除去術)をおこなうことがありますが、ルーチンの再掻爬は不要です。妊娠週数が進むほど、胞状奇胎の子宮内容物が多くなって、手術の際に出血のリスクがふえるなど負担になりますので、胞状奇胎と診断されたら、早めに手術を受けられた方がよいでしょう。
胞状奇胎除去手術は地域病院や診療所でも可能ではありますが、最近では胞状奇胎妊娠をより正確に診断するためにp57KIP2免疫染色を含めた詳細な病理検査をおこないますので、胞状奇胎と診断された段階で手術前に当院へ紹介・受診していただくことをお勧めしています。
胞状奇胎の手術後の外来通院は?
手術後は定期的に外来通院(1週間~1ヶ月に1回程度)していただき、血液中のhCGというホルモンの値を計測します。hCG値の下降が良好で正常値まで下がっていく経過順調型であれば、約6ヶ月で次の妊娠を許可しています。hCG値が正常値になるまでの期間は、早い方で2-3ヶ月ですが、遅い方だと5-6ヶ月かかることもあります。いずれの場合であっても、胞状奇胎後にこのhCGというホルモン値が正常値まで下がったことを主治医に必ず確認してもらってください。経過順調の場合は、特に次の妊娠や分娩に与える影響はありません。hCGの下降が順調でない場合は、次項に示すような病気に移行している可能性がありますので、必ず専門医の検査をうけるようにしてください。不安や心配のある方は、ぜひ当院へ紹介受診されることをお勧めします。
侵入奇胎・絨毛癌とは?
発生頻度や発生原因は?
胞状奇胎妊娠のうち、10-20%は侵入奇胎を発症し、1-2%は悪性の絨毛癌へと移行すると言われています。胞状奇胎妊娠または流産や分娩後に、子宮からの出血が止まりにくい場合、妊娠性ホルモンであるhCGの値が下がらない、あるいは尿検査で妊娠反応の陽性が持続する場合は、この病気である可能性があります。部分胞状奇胎からの侵入奇胎の発生率は全胞状奇胎に比べてかなり低いと言われていますが、現状ではゼロとは言い切れません。胞状奇胎の中でどのような患者さんが侵入奇胎や絨毛癌に移行していくのかは、現在のところまだ明らかになっておらず、多くの医学者がその発生原因を研究しています。
侵入奇胎のほとんどは、胞状奇胎後6ヶ月以内に発生しますので、胞状奇胎妊娠の後に、定期的な外来通院と血液検査(hCG測定)を欠かさなければ必ず発見できる病気ですのでご安心ください。胞状奇胎後に絨毛癌に移行してしまう前に、侵入奇胎の段階で確実な治療をうけることが最も大切です。絨毛癌は胞状奇胎後のみでなく、正常分娩・流産・人工妊娠中絶など様々な妊娠の後に起こりうるので、妊娠終了後に異常な性器出血などが有る場合は、必ず婦人科を受診することをお勧めします。
侵入奇胎の診断は? 症状は?
侵入奇胎とは子宮の筋肉の中に胞状奇胎の細胞の一部が侵入して腫瘍性病変を形成する病気で、一種の“前癌状態”という考え方もできます。約30%の症例は肺に転移します。子宮筋層内の病変は経腟エコー検査やカラードプラ・パワードプラ超音波によって、血流豊富な腫瘍として検出可能です。肺の転移は小さな病変の場合は通常の胸部レントゲン写真では見つけられないことが多いので、胸部CT検査が必要です。胞状奇胎後に子宮には病巣が認められないが肺にのみ病巣を認める場合(転移性奇胎とよばれる)や、hCGのホルモン値が高値であるが病巣がはっきりしない場合(奇胎後hCG存続症とよばれる)もありますが、基本的には侵入奇胎のカテゴリーとして、同様の治療方針が立てられています。
侵入奇胎の症状は特徴的なのものはありませんが、時に持続的な性器出血や腹痛をともなうことがあります。小さな肺転移病巣は通常無症状であることが多いです。
絨毛癌の診断は? 症状は?
絨毛癌も侵入奇胎と同様に子宮の筋肉内に腫瘍を形成しますが、一般に増殖や進展のスピードが侵入奇胎よりも早く、悪性度の高い癌であるといえます。エコー検査やカラードプラ・パワードプラによって侵入奇胎と同様の子宮筋層内の血流豊富な腫瘍として診断されます。子宮病巣の精査に造影MRIやMRアンギオグラフィーもしばしば使用されます。絨毛癌になると3分の2の症例で多発性肺転移を伴うといわれており、また肺のみでなく肝臓や脳、腎臓など全身に転移する可能性があるので、診断時に腹部、胸部、頭部の全身の造影CTによる検査を必要とします。子宮病巣からの大量性器出血や腹腔内出血の症状に加えて、転移病巣による症状(咳、血痰などの呼吸器症状や頭痛、けいれん、四肢麻痺、意識消失などの神経症状)が出現して、はじめて絨毛癌と診断されるケースもあります。
侵入奇胎・絨毛癌の治療は?
治療成績は?
侵入奇胎、絨毛癌とも抗癌剤が非常によく効く病気ですので、抗癌剤による化学療法が治療の中心となります。またhCGは非常に鋭敏な腫瘍マーカーとなるので血液中のhCGを定期的に計測しながら治療効果を判定したり、治癒(寛解)の判定に用いたりします。侵入奇胎の場合は1剤の抗癌剤(メソトレキセートまたはアクチノマイシンD)あるいは2剤の併用による化学療法で当院では100%の治癒率です。したがって子宮や卵巣を手術することなく、化学療法のみで治癒可能な疾患といえます。
これに対して絨毛癌の場合は初回から強力な多剤併用化学療法(メソトレキセート、アクチノマイシンD、エトポシドの3剤を中心に使用)が必要であることが多く、難治症例には子宮摘出術や転移病巣の手術を含めた集学的治療もおこなわれています。時には脳転移病巣に対しては放射線治療を併用することもあります。
絨毛癌の治癒率は一般に80-90%程度であり、再発・死亡するケースも存在するとされていますが、当院では絨毛癌であっても1990年以後は90%以上が治癒しております。なお抗癌剤の種類や投与方法、副作用などの詳細については私たちの執筆した下記の書籍をご覧ください。
侵入奇胎・絨毛癌の治療後の
妊娠や分娩は?
侵入奇胎や絨毛癌は20-30代の若い患者さんが多いので、治療後の妊娠を希望される患者さんには出来る限り化学療法のみで治療を行い、その後妊娠・分娩ができるようにしています。胞状奇胎後はもちろん、侵入奇胎や絨毛癌であっても、治癒終了後6ヶ月から1年間避妊していただき、その間に血液中のhCG値の再上昇などの再発徴候がなければ妊娠を許可しています。当院では治療終了後に無事に妊娠、出産されている患者さんを多数経験しています。治療後に妊娠した場合の流産率や出産した児の奇形率なども、一般の健康な妊婦さんと比べて特に差はありませんので、安心してください。
最後に最近の少子化のため、侵入奇胎や絨毛癌の絶対数も減少しており、これらの病気の治療を日常的におこなっている病院は少なくなってきています。絨毛性疾患の治療は子宮癌や卵巣癌などとは非常に異なるため、治療にはこの病気に熟練・精通した経験豊富なスタッフのいる施設での治療が望まれます。本疾患と診断された患者さんはぜひ当院へ受診をされることをお勧めします。この病気についてお尋ねになりたいことがあれば、診断された病院の先生を通じて新美薫准教授まで、ご連絡ください。
文献
- Aoki U, Yoshida K, Yasui Y, Nishiko Y, Yokoi A, Yoshikawa N, Nishino K, Yamamoto E, Niimi K, Kajiyama H. J Obstet Gynaecol Res. 2025 Jan;51(1):e16210. doi: 10.1111/jog.16210. PMID: 39780456
- 山本英子、新美薫、西野公博、井箟一彦:絨毛性疾患の発生動向の最新知見.産婦人科の実際.2023;第72巻2号:p109-114
- 新美薫、山本英子:hCG測定の留意点と低単位hCG持続症例の取り扱い.産婦人科の実際.2023;第72巻2号:p121-124
- 小田結加里、新美薫、梶山広明:侵入奇胎/low risk GTNの診断と治療.産婦人科の実際.2023;第72巻2号:p137-143
- 新美薫、山本英子:絨毛性疾患の臨床的分類.臨床婦人科産科.2022;第76巻2号:p272-278
- Yamamoto E, Nishino K, Niimi K, Watanabe E, Oda Y, Ino K, et al. Evaluation of a routine second curettage for hydatidiform mole: a cohort study. Int J Clin Oncol. 2020;25(6):1178-86. doi: 10.1007/s10147-020-01640-x. PMID: 32144509.
- 新美薫、山本英子、梶山広明:絨毛性疾患.臨床婦人科産科.2020;第74巻4号:p215-218